小説

ブラック・メイデン(新作)
もくじ:ブラック・メイデン

短編集

  • 「おかえりなさい」

    わたくしには帰る場所がありません。わたくしには不思議な力――人の願いを叶える力がございます。大抵の人々はわたくしの力で破滅していきました。わたくしは一切罪悪感は感じていませんでした。しかし、だんだん心が苦しくなり、人との関わりを拒絶するよう…

  • 願ったり奏でたり

     誰もいない夜の公園のベンチで、私はさめざめと泣いていた。「どうして! どうして! あんな女にあなたはなびくの?」 私は何かの糸が切れたように、声を大きく上げて泣きはじめてしまった。近所迷惑かもしれないけど、今はそれどころではない。あふれ出…

  • そういう世界に生きているのだけど

     村田鮎子はネオンサインが怪しく光るビルの屋上から飛び降りた。 彼女はそう思っていた。しかし、気がつけば、鮎子はビルの屋上で大の字に倒れていた。心臓の音が激しく鳴っている。一体何が起きたのか。鮎子は理解できない。「ちょっと……。まさかここで…

  • 異端者~彼女の行方

    後ろから鈍器のようなもので殴られた。目の前に星が飛ぶ。いくら残業でいつもより退社が遅かったとはいえ、油断していたのが悪かった。月明かりが明るかったのも尚更油断を促していた気がする。次にわたしは自分のバッグが引っ張られる感覚を覚えた。とっさに…

  • 「夢のレストラン」

     私は古ぼけて暗い印象の「夢のレストラン」という看板がかかっているシケたレストランのドアを開けた。「いらっしゃいませ」 店内は薄暗い照明の真ん中に椅子が三つだけ並んでいるカウンター席しかなかった。奥にはコック帽にコックコートを着たこざっぱり…

  • 満月ラプソディ

    1 秋口なので、流石に夕方は寒気を強く感じる。 おれは飲み干した缶コーヒーを誰もいないゴミ箱に捨てた。金属の鈍い音が響く。 カラスがうるさい。落ち込みたいのに、このカラスの鳴き声のせいで落ち込もうにも落ち込めない。「ああ。おれはここまで頑張…

恩知らずの闇子さん

その他(同人誌と同一世界観の話。設定は整理するかも知れないけど)

  • 「冷血の鏡子さん」

    「あれ。どこいったっけ」 私は夫からもらったピアスを探す。さりげなく揺れるエメラルドがついた小さな小さなピアスだ。大好きな夫からもらったピアス。とっておきのとき――例えば、夫とのデートの時とか――に付けようと思っていたピアス。 今日がそのデ…


パイロット版
  • パイロット版「恩知らずの闇子さん」その1

    「恩知らずの闇子さん」は、本編を書き始める前に、パイロット版を2編書いてます。様々なアドバイスを頂いた上で、本編を書き始めました。その一つをアップします。改めて読み返すと、二人とも性格が違くてびっくりします。本編と名字など設定が色々違います…

  • パイロット版「恩知らずの闇子さん」その2

    「北条さん、ごきげんよう。如何お過ごし?」 後ろから、髪の毛を美しく整え、メイクをバッチリ決めたクラスメイト、城鳥蓮華が高笑いしながら、背中を叩き、通り過ぎた。「城鳥さん……。どうも」 月曜の朝という一番嫌いで憂鬱な時間帯に、こんな高笑いを…

  • パイロット版「希望探偵エス」

    オレは冬休み間近の寒空の下、走りながら大声で泣いていた。道行く人々は呆れてオレを見ているだろう。しかし、オレはそんな人たちよりも自分の苦しい心を解放させたくて仕方がなかった。冷たい空気で張り付く喉に咳き込みながら、オレは誰も会いたくない一心…

能力質屋十六夜M4

  • 能力質屋十六夜M4:第一話「銀龍アヤ登場!」

    秋の六時過ぎ。紅葉はもう終わっていて、木々は裸となっていた。日はとうに暮れ、街灯が煌々と光っている。風は涼しく、頬を撫ぜた。わたしは中途半端な時間で誰もいない公園のベンチで大きく溜息をついた。そりゃ、そうだ。三ヶ月前に勤めていた会社から戦力…

  • 能力質屋十六夜M4:第二話「美のリスク。」

    「私はブスだから、彼氏もお客も来ないのよ! それでも必死に貯めたお金があるわ。さあ、売れるホステスになれるようにしてちょうだい!」確かにお世辞にも美人には見えない、いや普通以下の容姿を持ったふくよかな女性がわたしの前で泣いていた。正直、服も…

今日は明日の物語シリーズ

・春風にのってきたサザンクロス

  • 春風にのってきたサザンクロス

     爽やかな日差しの中、あたしは風を切りながら深い森を越えようと、愛用のホバーボードで宙を駆けていた。 若干、暑く汗ばんできたので、川の上を滑るように飛ぶことにした。水しぶきが冷たい風と共に足にあたり、とても涼しい。 気分がとても良いので、思…

  • 帰ってきたサザンクロス

    「ちょっと待ってよ。どうして、あたしがあんたに拉致されなきゃいけないのよ」「いいだろ、こんなに豪華なリムジンに乗ることなんざ、流浪のお前にはまずないだろうから、少しは得したと思えよ、クロス」 いつもの通り、ホバーボードで旅をしていたあたした…

・西風が吹く

  • 「銀のトビラを開くアヴァロン・セレスタイト」

    「ありがとう」 こう繰り返し頭を下げる老女に、「いえ、神々にお祈りをする手伝いをするのがわたしたち神官の仕事。こちらもお役に立ててうれしかったですよ」 小礼拝堂の前で神官長の孫娘で次期神官長のゼフィは老女の手を握る。 神殿で働くぼくら神官の…

・リトルプレスweb再録(プロトバージョン)
カクヨム(外部サイト)

ふたりの願い事(旧神喫)
もくじ:ふたりの願い事(完結済)