短編

「夢のレストラン」

 私は古ぼけて暗い印象の「夢のレストラン」という看板がかかっているシケたレストランのドアを開けた。「いらっしゃいませ」 店内は薄暗い照明の真ん中に椅子が三つだけ並んでいるカウンター席しかなかった。奥にはコック帽にコックコートを着たこざっぱり…

異端者~彼女の行方

後ろから鈍器のようなもので殴られた。目の前に星が飛ぶ。いくら残業でいつもより退社が遅かったとはいえ、油断していたのが悪かった。月明かりが明るかったのも尚更油断を促していた気がする。次にわたしは自分のバッグが引っ張られる感覚を覚えた。とっさに…

そういう世界に生きているのだけど

 村田鮎子はネオンサインが怪しく光るビルの屋上から飛び降りた。 彼女はそう思っていた。しかし、気がつけば、鮎子はビルの屋上で大の字に倒れていた。心臓の音が激しく鳴っている。一体何が起きたのか。鮎子は理解できない。「ちょっと……。まさかここで…

願ったり奏でたり

 誰もいない夜の公園のベンチで、私はさめざめと泣いていた。「どうして! どうして! あんな女にあなたはなびくの?」 私は何かの糸が切れたように、声を大きく上げて泣きはじめてしまった。近所迷惑かもしれないけど、今はそれどころではない。あふれ出…

「おかえりなさい」

わたくしには帰る場所がありません。わたくしには不思議な力――人の願いを叶える力がございます。大抵の人々はわたくしの力で破滅していきました。わたくしは一切罪悪感は感じていませんでした。しかし、だんだん心が苦しくなり、人との関わりを拒絶するよう…