ふたりの願い事

第六柱「思春期オバサン」

ここは純喫茶「がじぇっと」。喫茶店特有の落ち着いた雰囲気のおかげで、繁盛までは行かなくても、それなりにお客が入っていた。カウンター席では、ややグラマーでそれなりの顔をしてはいるものの、とうに結婚適齢期を過ぎた女性がいた。彼女は夢心地な様子で…

第五柱「ゆうれいさん」

白いセーラー服姿の篠座ひびきは「喫茶がじぇっと」の扉を開けた。「ひびき、どうしたの。そんなグロッキーな顔をして」ひびきの叔父でマスターはカウンターの奥で、カップを磨きながら首をかしげた。「う……。ちょっと、つきまとわれててね……」「えっ。も…

第四柱「エスプレッソ」

五月の明るい日差しが眩しい純喫茶「がじぇっと」の日曜日、「どうしたのよ。そのギター」ひびきは古森がアコースティックギターを抱えているのを見て驚いた。「あ、これね。マスターが格好いいから、飾ろうともらってきたんだって。でも、どうせあるなら弾き…

第三柱「ワンアンドオンリー」

ひびきが古森と会ってから、一週間が経った。古森のことを第六感的な何かで気になっていたひびきは、学校帰りに毎日古森神社の前を訪れていた。しかし、別段声を掛けるでもなく、境内を軽く覗いて、そのまま帰宅していた。ひびきは一人では広すぎる自宅に帰っ…

第二柱「出会い」

四月も中旬になって、暖かさが増してきた頃のこと。ここは喫茶「がじぇっと」の店の中には、客ははおろか、マスターまでいなかった。それにも関わらず、セーラー服の少女――篠座ひびきは一人コーヒーを飲んでいた。茶髪のポニーテールが印象的である。カラカ…

第一柱「神様はアルバイト」

「ブレンドです」ここは翠埜市街地の左右知商店街にある「喫茶がじぇっと」。商店街の人通りは多くもなく少なくもなかった。この喫茶店も例外ではなく、まばらではあるが客で席は埋まっていた。髭面のせいで割と年を食っているように見えるここのマスターは、…

まえがき

これは同人誌版「神様はいる喫茶店」のリメイク前の作品です。ごちゃごちゃにならないように「ふたりの願い事」へ改題しました。第一話と第三話も改題してます。(同じサブタイトルがあるため)設定は結構違っています。ひびき17歳ですよ、わお。若い。名字…