もくじ:冷血の鏡子さん

  • プロローグ

    「なあ」「なに?」「本当に『黒谷鏡子』って名乗るのか?」「ええ、そうですよ。本名……戸籍の名前じゃリスキーだと言ったのはあなたの方じゃないですか」「そら、そうだろ。お前は性格悪いんだから。あたしとあんたは双子で同じ顔。あんたのしたことで、あ…

  • ケース1「誰がために金はある」

     わたしはやっとのことで就職することができた。児童福祉施設だ。夫の転勤で前の職を辞めざる得なく、新天地では主婦への就職先はなかなかなかった。 仕事が見つかったといっても、福祉の資格は何もないので、これから取らなければいけない。しかし、就職で…

  • ケース2「我が輩は課長である」

     帰宅した俺は、一日頑張ったご褒美に缶ビールを開けた。炭酸が弾ける音がする。 キンキンに冷えたビールは五臓六腑に染み渡る。この三百五十ミリリットルのために、毎日頑張っている。 第三のビールやら発泡酒やらあるが、あんなのは邪道だ。ビールが一番…

  • ケース3「カレーライス」

     気怠い暑さがオレの身体をダメにする。 暑くて、何もしたくない。エアコンを付ければ? と言われそうだが、無職のオレにそんな電気代はない。家があるだけ、まだマシだ。 以前、窓を開けてみたことがある。しかし、隣の家から流れてくる室外機の風が、オ…

  • ケース4「ぼくとお嬢のブルース」

     ああー。学校に行きたくないなあ。 夏の空はとても明るいが、心はどんよりくもり空だ。 ぼくは、今、バスに乗って、郊外のショッピングモールへ向かっている。今日は平日なので、学生は誰ひとり乗っていない。いるのは、免許を返納したように見えるジジイ…

  • ケース5「学校にて」

     わたしは教卓を勢いよく叩いた。それから、生徒たちに見せびらかすように、真っ赤に染まったぞうきんを掲げる。 今時の十七の子供は繊細なのだろうか。口元を押さえながら、青ざめる女子が何人もいた。男子生徒たちは顔色を悪くしながらも、そのぞうきんを…

  • ケース6「まんがの道程」

     夕焼けがロングシートを照らす。電車の中は都会を抜けたためか、人はまばらだ。 わたしはぼうっと、その赤々とした夕焼けを見る。 ああ、きれいだわ。 真夏の太陽は人々に光を照らし、希望を与える。 それにひきかえ、どうしてわたしはこんなに何もない…

  • エピローグ

    「さて、『黒谷鏡子』はどうだった?」「なかなか具合が良かったですね。こちらの身分を明かさないって、これほど楽とは思いませんでした」「不義理じゃないって分かったしな」「そうですね」「ところで、大学をやめるんだって?」「え、なんのことでしょうか…

 

パイロット版「冷血の鏡子さん」
鏡子が高校時代の話という設定。