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第四柱「エスプレッソ」

五月の明るい日差しが眩しい純喫茶「がじぇっと」の日曜日、「どうしたのよ。そのギター」ひびきは古森がアコースティックギターを抱えているのを見て驚いた。「あ、これね。マスターが格好いいから、飾ろうともらってきたんだって。でも、どうせあるなら弾き…

第三柱「ワンアンドオンリー」

ひびきが古森と会ってから、一週間が経った。古森のことを第六感的な何かで気になっていたひびきは、学校帰りに毎日古森神社の前を訪れていた。しかし、別段声を掛けるでもなく、境内を軽く覗いて、そのまま帰宅していた。ひびきは一人では広すぎる自宅に帰っ…

第二柱「出会い」

四月も中旬になって、暖かさが増してきた頃のこと。ここは喫茶「がじぇっと」の店の中には、客ははおろか、マスターまでいなかった。それにも関わらず、セーラー服の少女――篠座ひびきは一人コーヒーを飲んでいた。茶髪のポニーテールが印象的である。カラカ…

第一柱「神様はアルバイト」

「ブレンドです」ここは翠埜市街地の左右知商店街にある「喫茶がじぇっと」。商店街の人通りは多くもなく少なくもなかった。この喫茶店も例外ではなく、まばらではあるが客で席は埋まっていた。髭面のせいで割と年を食っているように見えるここのマスターは、…

まえがき

これは同人誌版「神様はいる喫茶店」のリメイク前の作品です。ごちゃごちゃにならないように「ふたりの願い事」へ改題しました。第一話と第三話も改題してます。(同じサブタイトルがあるため)設定は結構違っています。ひびき17歳ですよ、わお。若い。名字…

そういう世界に生きているのだけど

 村田鮎子はネオンサインが怪しく光るビルの屋上から飛び降りた。 彼女はそう思っていた。しかし、気がつけば、鮎子はビルの屋上で大の字に倒れていた。心臓の音が激しく鳴っている。一体何が起きたのか。鮎子は理解できない。「ちょっと……。まさかここで…

神喫反省会

ネタバレ注意!!神喫の振り返り。発行して一年経ちました。過去に読み返してみての感想を徒然と書いたヤツに加筆しました。全体的にお説教臭い話だったな……と振り返り。最後のひびきの長セリフが長すぎた……と思うんですけど、あれを入れなきゃ、話が終わ…

能力質屋十六夜M4:第二話「美のリスク。」

「私はブスだから、彼氏もお客も来ないのよ! それでも必死に貯めたお金があるわ。さあ、売れるホステスになれるようにしてちょうだい!」 確かにお世辞にも美人には見えない、いや普通以下の容姿を持ったふくよかな女性がわたしの前で泣いていた。正直、服…

願ったり奏でたり

 誰もいない夜の公園のベンチで、私はさめざめと泣いていた。「どうして! どうして! あんな女にあなたはなびくの?」 私は何かの糸が切れたように、声を大きく上げて泣きはじめてしまった。近所迷惑かもしれないけど、今はそれどころではない。あふれ出…

パイロット版「恩知らずの闇子さん」その1

「恩知らずの闇子さん」は、本編を書き始める前に、パイロット版を2編書いてます。様々なアドバイスを頂いた上で、本編を書き始めました。その一つをアップします。改めて読み返すと、二人とも性格が違くてびっくりします。本編と名字など設定が色々違います…

「おかえりなさい」

わたくしには帰る場所がありません。わたくしには不思議な力――人の願いを叶える力がございます。大抵の人々はわたくしの力で破滅していきました。わたくしは一切罪悪感は感じていませんでした。しかし、だんだん心が苦しくなり、人との関わりを拒絶するよう…