小説

第十五柱「存在する価値」

喫茶「がじぇっと」のひげ面のマスターはイライラしていた。時刻は夜十時を回っていたので、マスターはお店を閉めたかった。しかし、いっこうに帰らないお客が一組いた。怒っても良かったのだが、マスターは温厚で、尚且つ分別の付いている男性だったので、ま…

第十四柱「天使の鏡」

古森は、ひびきと店の奥に置くカラーボックスを買いに、郊外のショッピングモールまで出かけていた。予算も大きさもちょうどいい物があったので、それを購入し、そのほかの細々としたものを買ったあと、「ねえ、コモリ。あんた、おなかすいてない?」ひびきは…

第十三柱「芸能人は命が大事」

ここは喫茶「がじぇっと」。癖毛に金の瞳を持った少年、古森はカウンターに肘をついて、放心していた。「なあ、コモリ君。起きてるか?」マスターの息子で刑事の友兼ゆたかが店の奥から出てきた。びしっとスーツに身を固めている。「ええ……起きてますよ………

第十二柱「見失い女」

正午に入ってすぐにこと。「喫茶 がじぇっと」の一角で、一〇代後半の若い女性が四人、一枚の紙を見て黄色い声をあげていた。ここで働いている癖毛に金の瞳を持った少年、古森は女性達の姿を見て、もうちょっと静かにしてくれないかなあ……と冷ややかな目で…

第十一柱「自分のオールを他人にまかせる女」

水曜日の夕方5時過ぎ、茶髪のポニーテールの少女――篠座ひびきが喫茶「がじぇっと」に入ってくるなり、「あら、珍しや。コモリが本を読んでる」と驚きの声をあげた。「失礼な。ボクだって本ぐらい読むさ」黒い癖毛に金の瞳を持つ少年、古森はそう言うと、文…

第十柱「素の自分」

ここは県立敬貴高校の校門前。「って訳でさーオレは素の自分を出し切っていないワケよ! 分かる? ねえ! ひびきちゃあん」敬貴高校の学ランを着た刈り上げ頭の少年が、同じ敬貴高校のセーラー服を着ている茶色のポニーテール少女の篠座ひびきに、まるで酔…

第九柱「自分を見つめて」

ここは喫茶「がじぇっと」。大勢のお客で大賑わい……というわけではないが、入れ替わり立ち替わりで、お客さんが入ってきている。その中で、カウンターでずっと座り込んでいる中年の女性がいた。それは容姿は老けていたためか恵まれてない……例え若かったと…

第八柱「女王蜂とカースト制度」

衣替えも無事に済み、気がつけば梅雨に入った頃のこと。「がじぇっと」がある翠埜市の隣町の学校、私立組川大学付属高校で、昼休みに二年三組の中心的メンバーが、派手な髪とメイクをしている少女を「ええ。アイカさんはすばらしい!」「あまりの迫真の演技に…

第七柱「ひとさがし」

「マスター。今日はお客さん、一人もいないんですね……」古森は、喫茶「がじぇっと」におつかいから帰ってくるなり、こう言った。「ああ……そうだね。土曜日のお昼なのにね、はあ……」古森の言うとおり、お客は一人もおらず、マスターはため息をついた。カ…

第六柱「思春期オバサン」

ここは純喫茶「がじぇっと」。喫茶店特有の落ち着いた雰囲気のおかげで、繁盛までは行かなくても、それなりにお客が入っていた。カウンター席では、ややグラマーでそれなりの顔をしてはいるものの、とうに結婚適齢期を過ぎた女性がいた。彼女は夢心地な様子で…

第五柱「ゆうれいさん」

白いセーラー服姿の篠座ひびきは「喫茶がじぇっと」の扉を開けた。「ひびき、どうしたの。そんなグロッキーな顔をして」ひびきの叔父でマスターはカウンターの奥で、カップを磨きながら首をかしげた。「う……。ちょっと、つきまとわれててね……」「えっ。も…

第四柱「エスプレッソ」

五月の明るい日差しが眩しい純喫茶「がじぇっと」の日曜日、「どうしたのよ。そのギター」ひびきは古森がアコースティックギターを抱えているのを見て驚いた。「あ、これね。マスターが格好いいから、飾ろうともらってきたんだって。でも、どうせあるなら弾き…