プロローグ
トクントクン。 うつ伏せに倒れたあたしは脈を打ちながら出血していた。視界は自分の血で真っ赤に染まっていく。「血液はちゃんと採れたか?」 今まであたしを守ってくれた二人の近衛兵の声が薄れゆく意識の中、聞こえる。 久しぶりのお出かけで、ストロ…
シークエンス1「ヴァレントヴァガボンド」
「旦那さま、何かありましたか?」一等席の個室席で、オレの斜向かいに座るオレの秘書が気まずそうにこちらを見た。先代の領主である親父が死んで、早半年。その跡を継いだオレはまだ部下の信頼を得ていない。まだ二十四の若造ってこともあるだろう。オレの人…
シークエンス2「エンチャントエクスプローラー」
「ホタル先輩、この前の事件、見ましたよー! あんな事件を解決するなんて、凄すぎますー!」太陽がさんさんと降り注ぐ喫茶店のテラス席で、大学の後輩、リシン・フィニルが大げさな身振り手振りで、オレを褒め散らかしていた。「そのイケメンぶりにさぞかし…
シークエンス3「ノーブルナビゲーター」
うう。お腹空いた。今日一日、安い骨董品を高値で買えと、ほぼ軟禁状態で恫喝されたが、なんとか逃げ切れることができた。まったく、あんな安物をつかまされたら、あたしの商売はあがったりよ。早く鶏肉の薬草焼きが食べたいわね。ここ、アライブ領の「売人の…
シークエンス4「デセントドール」
「こうやって遊ぶのは久々だな」 高校まで一緒だったキトルスは大きく笑う。いつも思うことだが、もやしみたいな身体から、どうしてこんなに大きな声が出るのだろう。何年経ってもこいつはこいつだ。オレがひきこもっていた高校時代も領主になった現在も、変…